がんの発症や進行に深く関わる「マイクロRNA」は、医学の世界で長年注目されてきた重要な分子です。2024年にはノーベル生理学・医学賞のテーマにも選ばれ、その意義が世界的に認められました。
しかし、マイクロRNAは体液中にごくわずかしか存在せず、しかも非常に壊れやすいため、正確に検出するのはこれまで困難とされてきました。
その課題を克服する鍵となったのが「エクソソーム」と呼ばれる、細胞から分泌される極小のカプセルです。この中に包まれることで、マイクロRNAは外の環境から守られ、壊れにくい安定した状態で存在することができます。
Craifは、このエクソソームを尿から効率よく取り出し、中に含まれるマイクロRNAを精密に解析する独自技術を開発しました。これにより、従来の方法では検出が難しかった微量なマイクロRNAも正確に捉えることが可能となり、高い信頼性と再現性をもつデータを安定して得られるようになっています。
2025年4月時点で、このAIは10種類のがん※(食道・胃・すい臓・肺・大腸・卵巣・乳房・腎臓・膀胱・前立腺)に対応しており、中でも早期のすい臓がんについては、93%の確率で正しく見つけるという、世界トップクラスの精度を学術論文で発表しています。

この大量のデータをもとに、AI(人工知能)による解析を行い、がんのリスクを予測するアルゴリズムを開発しています。
Craifは、北海道大学病院および岩内協会病院と連携し、北海道岩内町にて町民の皆さまのご協力を得ながら実証研究を行いました。
この取り組みでは、健康な町民100人にマイシグナル・スキャンを受けていただき、その中からステージ0(超早期)の肺がんを発見することに成功しました。
自覚症状のない段階でのがん発見は、これまで非常に困難とされてきましたが、今回の成果はマイシグナル・スキャンの社会実装に向けた重要なマイルストーンとなります。地域と医療機関との連携により、がんの早期発見を実現する未来が、いま現実のものとなり始めています。
Craifでは、尿中のマイクロRNAとAI(人工知能)による解析技術を組み合わせ、すい臓がんの診断をサポートする新しい医療機器の開発を進めています。
この機器では、尿に含まれるマイクロRNAの量やパターンをもとに算出したスコアにより、「陽性」または「陰性」の判定を行い、すい臓がんの可能性を評価します。
腫瘍マーカーや腹部の超音波検査と同様に、この機器はすい臓がんの症状やリスク因子を持つ方に対して使われ、精密検査を実施すべきかどうかを判断するための補助ツールとして設計されています。
現在、この医療機器は全国の複数の医療機関と連携しながら、信頼性を確認するための大規模な臨床試験(ピボタル試験)を実施中です。2027年の承認取得を目指して、製造販売に向けた準備を進めています。
この技術は、すい臓がんの早期発見と適切な診断を支える、新たな選択肢となることを目指しています。



