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2025.03.14

Craif、尿中代謝物による消化器がん早期発見の
研究成果が日本消化器がん検診学会雑誌に掲載

 尿がん検査「マイシグナル」を提供するCraif株式会社(所在地:東京都文京区、CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)は消化器がん(すい臓がん・胃がん・大腸がん)の早期スクリーニングにおける尿中代謝物(N1,N12-ジアセチルスペルミン/ DiAcSpm)の有用性を評価した研究成果を明らかにしました。本研究成果は、2025年3月14日に日本消化器がん検診学会雑誌(Journal of Gastrointestinal Cancer Screening)に掲載されました。

■ 研究成果のポイント
簡便な尿検査で、がんの早期発見が可能に
・尿中のDiAcSpm値を測定することで、ステージ1の消化器がんの早期発見が可能であることを示した。
・ROC曲線のAUC(診断精度を示す指標)は大腸がん・胃がんのステージIで0.88と高く、がんスクリーニング手法として有望な診断性能が示唆された。
・すい臓がんでは、がんが進行するほど尿中DiAcSpm値が上昇し、診断性能が向上する傾向が認められた。

非侵襲・低負担の新しいがん検査手法として期待
・採尿のみで検査が可能なため、内視鏡検査が必要な高リスク群を事前に特定する手法として期待される。
・ハイリスク集団に内視鏡の受診を促すことで、がんの早期発見率の向上と医療リソースの適正配分に貢献する可能性がある。

■ 研究概要
背景と目的
日本では内視鏡検査の受診率が低く、また、内視鏡検査を実施できる医療機関や医師の数には限りがあります。そのため、がん検診の効率を高めるためには、内視鏡検診受診率を高めるだけでなく、内視鏡を受けるべき人を事前に選別するリスク層別化の仕組みが求められています。早期ステージの様々な種類のがんを検出できる尿中バイオマーカーとして、DiAcSpmが以前から注目され研究されてきました。そこで本研究では、尿中DiAcSpmが大腸がん・胃がん・すい臓がんの早期診断に有効かを評価しました。

研究方法
健康成人(78名)およびがん患者(125名)の尿サンプルを分析
ELISA法を用いて尿中DiAcSpm濃度を測定
ROC曲線を用いた診断性能の評価

主な研究成果
本研究では、尿中N1,N12-ジアセチルスペルミン(DiAcSpm)が、消化器がんの診断において高い精度を示すことが示唆されました。クレアチニン補正された尿中DiAcSpm値(DiAcSpm/Cre値)は、がん患者群において有意に高値を示し(p<0.001)、特に大腸がんおよび胃がんのステージIにおいてもAUC 0.88という高い診断精度を示しました。これにより、尿検査を活用した早期スクリーニングの有効性が示唆されました。特に胃がん検出における尿中DiAcSpmの性能に関して示したのは本研究が初めての報告となります。

また、すい臓がんに関しては、尿中DiAcSpm/Cre値ががんの進行に伴って上昇し、診断性能が向上する傾向が確認されました。この特性は、既存の腫瘍マーカーであるCA19-9と同様の傾向を示しており、今後のさらなる研究によって、すい臓がんの診断補助として活用できる可能性が期待されます。また、尿中マイクロRNA等、早期ステージのすい臓がん検出に強みを持つことが報告されているバイオマーカーと組み合わせることで、さらに検出性能を上げられる可能性があります。

本手法の大きな利点は、その非侵襲性にあります。採尿のみで検査が可能であり、従来の内視鏡検査の負担を大幅に軽減できる点が注目されます。また、DiAcSpmは多くのがん種に適用可能なバイオマーカーであることから、がん検診の受診率向上にも貢献する可能性が高いです。本研究の結果を踏まえ、尿検査を活用した新たながんスクリーニング戦略の確立が期待されます。

今後の展望
尿中DiAcSpmによる早期がんリスク評価は、既に「マイシグナル・ライト」として社会で活用されはじめています。今後、日本人がん患者のデータをさらに蓄積することで、尿中DiAcSpmを活用した新たながんスクリーニング検査の確立を目指します。特に、既存の検査方法と組み合わせることで、効率的なリスク層別化と早期診断の実現に貢献することが期待されます。

■ 用語説明
・N1,N12-ジアセチルスペルミン(DiAcSpm):ポリアミンの一種であり、がん細胞が活発に増殖する際に尿中へ排出されるバイオマーカー。がんの進行とともに尿中濃度が上昇することが知られている。

・ROC解析(Receiver Operating Characteristic解析):診断検査の性能を評価する統計手法。感度(正しくがんを検出する割合)と特異度(健康な人を正しく健康と判定する割合)の関係をグラフ化し、AUC(曲線下面積)によって診断精度を数値化する。

・AUC(Area Under the Curve):ROC解析の指標で、0から1の範囲で表される。1に近いほど診断精度が高いことを意味し、一般的に0.80以上であれば高い診断性能があるとされる。

・感度と特異度:感度は疾患を持った人のうちその検査結果が陽性である人の割合を示し、特異度は疾患を持たない人のうちその検査結果が陰性である人の割合を示す。感度の計算式は、(真陽性)/(真陽性+偽陰性)となる。また、特異度の計算式は、(真陰性)/(偽陽性+真陰性)となる。

・クレアチニン補正:尿中のバイオマーカー濃度を測定する際、尿の希釈度を補正するために尿中クレアチニン濃度を基準にする手法。尿の希釈度の影響を受けにくくするため、信頼性の高い検査結果が得られる。

■ 論文情報
雑誌名:日本消化器がん検診学会雑誌(Journal of Gastrointestinal Cancer Screening)(2025年3月号)
題名 :消化器がん早期スクリーニングにおける尿中N1,N12-ジアセチルスペルミンの有用性の初期評価
著者名:髙山和也、水沼未雅、平野雅規、三上素樹、杉村優一、市川裕樹
DOI :https://doi.org/10.11404/jsgcs.63.83

■ Craifについて
 Craifは、2018年創業の名古屋大学発ベンチャー企業です。尿などの簡単に採取できる体液中から、マイクロRNAをはじめとする病気に関連した生体物質を高い精度で検出する基盤技術「NANO IP®︎(NANO Intelligence Platform)」を有しています。CraifはNANO IP®︎を用いてがんの早期発見や一人ひとりに合わせた医療を実現するための検査の開発に取り組んでいます。

【会社概要】
社名:Craif株式会社(読み:クライフ、英語表記:Craif Inc.)
代表者:代表取締役 小野瀨 隆一
設立:2018年5月
資本金:1億円(2024年3月1日現在)
事業:がん領域を中心とした疾患の早期発見や個別化医療の実現に向けた次世代検査の研究・開発、尿がん検査「マイシグナルシリーズ」の提供
本社:東京都文京区湯島2-25-7 ITP本郷オフィス5F
URL:https://craif.com/

マイシグナルシリーズは医療機器ではありません。解析した情報を統計的に計算することによりリスクを判定するものであり、医療行為としてがんに罹患しているかどうかの「診断」に変わるものではなく、リスクが低いと判定された場合でもがんが無いまたは将来がんにかからないとは限りません。