ナノ加工技術によるマイクロ流路チップで、
エクソソームの高効率回収を実現
我々の体内では、細胞が放出するエクソソームが他の細胞に受け渡されることで、1細胞レベルを越えた様々な細胞間情報伝達が行われている。特にがん細胞が放出するエクソソームには血管新生や転移、免疫逃避に関連する分子が含まれることが示されており、がんの進展に適した微小環境構築に重要な役割を担うと考えられている。
Craifの開発したナノワイヤデバイスを用いてエクソソームを高効率に回収すれば、がんをはじめとした多くの疾病に関わる細胞間のクロストークを高精度に読み取ることができる。
エクソソームはほぼ全ての種類の細胞が分泌する小型(直径 30 ~ 100 nm 程度)の膜小胞で、血液や尿・ 髄液・涙・唾液などの体液や細胞培養液中に数多く存在している。近年、エクソソーム内部に含有される分子(脂質・タンパク質・RNA など)が他の細胞に受け渡されることで、1細胞レベルを越えた様々な細胞間情報伝達を担うことが判明し、その機能への注目が高まっている。
酸化亜鉛ナノ構造体とマイクロ流路を組み合わせたCraif独自のデバイスにより、がん細胞から分泌されて、尿中に含まれる微量のmicroRNAを高効率に分離・回収することで、高精度ながん早期診断を可能にする。
細胞から分泌される生体物質であり、がん細胞と正常細胞では分泌されるmicroRNA(miRNA)の種類や量が異なる。がん細胞のmiRNAは血液検査・画像診断・内視鏡等では発見しにくい早期の段階のがんから分泌されるため、新たながん早期診断のターゲットとして研究されている。
Craifの保有するmiRNAデータベースと機械学習技術を組み合わせることにより、独自のがん発見プログラムの開発を行っている。ナノデバイスにより分離・回収されたmiRNAのプロファイルをがん診断プログラムにより分析することで、がんの早期・高精度発見を行う。
がん細胞が放出するエクソソームには血管新生や転移、免疫逃避に関連する分子が含まれることが示されており、がんの進展に適した微小環境構築に重要な役割を担うと考えられている。更に、エクソソームに含まれる特定のタンパク質や RNA の発現様式が、がんの状態や進展と関連し、バイオマーカーとして有用であることが示されており、がんの早期診断や治療効果の判定などへの応用が大きく期待されている。がん細胞が発するエクソソームだけでなく、がん微小環境構築に関わる細胞由来のエクソソームからも特異的なバイオマーカーを見出せれば、早期がん診断実現の蓋然性は高い。実際に、肺がん・脳腫瘍患者の尿検体を解析した後ろ向き臨床研究の検討を本デバイスで実施したところ、初期段階の肺がん・脳腫瘍でも高い精度で検出することに成功している。また、脳腫瘍と肺がんの識別にも成功しており、がん種の区別をつけることができる尿検査の開発を進めている。
Urinary MicroRNAs as Systemic Lupus Erythematosus Biomarkers and its potential for accurate assessment of disease severity
ACR Convergence 2021
Urinary MicroRNAs as Biomarkers for Early Detection of Ovarian Cancer
第80回日本癌学会学術総会
リキッドバイオプシーにおける尿中microRNAの可能性
第41回日本分子腫瘍マーカー研究会